川の音、鳥の声、ひぐらしの音で目が覚めました。
まだ空が薄暗く、霧の中の世界。
闇のなかの妖怪さんや妖精さんとふと出会ってしまいそう。
こっそりいつもの朝の体操を済ませて、りんごをいただくと、天川村へ向かいました。
道の駅から30分程の距離でしたので、朝の祝詞の時間には間に合うと余裕を持って出発しました。
でもさっきから小雨がぱらついてどうもすっきりしない天気。
縁がないとたどり着けない秘境と呼ばれている場所。
無事ついてくれるといいけど。
私達チェレステ楽団はものすごい方向音痴で、ナビがないと大変なことになります。
特に山のなかはナビの反応が悪くて、、、
あれ?ここさっきも通らなかったっけ。
ナビの通りに進んでいるのに、ぐるぐる回って、泊まっていた道の駅に戻ってしまいます。
何度も再起動してまた挑戦。
すると、とんでもない山道へと突入してしまいました。
どうやら小南峠というところを通っているようです。
狭い道と一緒に川がごうごうと流れています。
知っている道だったら自然の中で楽しいはずでしょうが、、、
怖くて怖くて。車が大きいので、引き返すのも難かしく、ずんずん登って行きました。
どんどん道が狭くなって、沢から溢れた水が道路にざあざあ。
雨の後だから危険だよ〜。
どうしよう。
落石注意の看板のそばからは、相当な量の落石がゴロゴロ転がっています。
木々の合間から見えるのは深い森。
半べそかいている私の横で必死に運転のトシオさん。
なんだかとりつかれた様にもくもくと進んでゆきます。
そしてとうとうあちらの世界の入り口へ。
と思う程、震え上がりました。
手彫りのトンネル。高さはギリギリ、横幅はギリギリ。
もしかしたら途中出っ張っているところでもあれば、通行不可に。
でも今きた道を引き返すのも、、、
意を決して灯りのない暗いトンネルの中へ。
もう夢中であまり覚えていませんが、二人の心はひとつ。
光の方へ。
その後、方針状態でまた細い道を下り、やっと広い道へとたどり着きました。
天川村へまでに洞川温泉やお寺などありましたが、もう車を降りて観光する気分ではなかったので、そのまま天河大弁財天社へ。
予定の30分が2時間近くかかりました。
「 酷道 」 として有名な峠のようですが。
冬になると通行止めになるそうです。
迂回路の案内の看板などあったようですがまるで気づきませんでした。
小南峠の名称の由来は、あまりにも苦しい峠道なので貴重な米すら投げ捨ててしまう「米投げ」が転訛し「こみなみ」となったそうです。
「ひだる(空腹)神」に憑かれ、歩行不能になった者も多かったそうです。
でもなんとかたどり着きましたし、、、
そう。この試練を乗り越え、ここへワープしてきたと思うことにしよう。
そう思った途端、曇っていた空がぱーっと晴れて、青空が出てきました。
だんだん元気を取り戻してきました。
巫女さんの箒をはらう音がします。
月曜の朝ですので、訪れる人が少なく、またゆっくりお参り出来ました。
今まで見たどんな神社より美しく洗練されています。
ゴンゴロ不思議な音。
拝殿の五十鈴(いすず)は、天河神社に古来伝わる独自の神器。
「天照大御神が天岩屋戸に篭もられたとき、天宇受売命がちまきの矛(神代鈴をつけた矛)を持って、岩屋戸の前にて舞を舞われ、神の御神力と御稜威を乞い願われた。
それによって岩屋戸が開かれ、天地とともに明るく照りかがやいたという神話に登場する、天宇受売命が使用した神代鈴と同様のものであると伝承では言われている。」
そうです。
本殿に祀られている弁財天像は普段見る事が出来ず、毎年7月16日から17日にかけて盛大に執り行われる例大祭においてのみ御開帳され、各種祝詞・般若心経や神楽とともに、能楽やアーティストの演奏などが奏上されるそうです。
宮司さんに音楽のことを伝えると、奉納させていただけることに。
朝の澄んだ空気のなかで、大好きな音楽たちが響いてゆきます。
気に入っていただけるかしら。
とても緊張していました。
演奏しているうちに背中のあたりからあつい何かがぐーっと入ってくるような感覚になりました。
そうしたら胸の内が込み上げてきて、こぼれるように声が出てきました。
不思議な感覚。
能舞台は響きが良く、とても気持ちが良いです。
美しくしなやかな拝殿を見つめると奥の鏡がキラキラ。
素晴らしいひとときでした。
おみくじを引くと、なんと大吉 !
滅多に大吉なんて引いたことがないのでびっくり。
恐怖の天川村への道でしたが、
すっかり良い思い出に変わりました。
たどり着いてよかった。
この縁に感謝。
ありがとうございました。